日本語は話すことだけをとらえたら覚えやすい言語に入ります。
基本は50音で成り立っていますから、ひらがなだけを用いて音を覚えていけば他の言語を覚えるよりも簡単にできます。
濁音、半濁音(ぱ、ぴ、ぷ)、拗音(きゃ、きゅ、ひょ)、撥音(ん)、促音(きって、とっての小さい「っ」)を加えても80音にもなりません。
ところが実際の生活になるとひらがなだけでは困ります。
音が少ない分、同音異義語がたくさんあります。
特に漢字を音読みしている熟語においては、その言葉だけ単語で言っても意味が分からないことが多くあります。
たとえば「かんき」と言われれば、前後の脈絡がわからないとものすごい数の意味が存在します。
換気、喚起、歓喜、乾季、寒気、勘気、官紀、刊記、管機・・・何十とあります。
これを表意文字である漢字が補っているわけです。
言葉は初めは音から身につけます。
母親や周りの人たちがしゃべっている音を真似ることから始まります。
そしてその音が何を指しているかを学びます。
小さな子供たちは身近にある具体的な物や、目に見える具体的な物の名前を何度も聞きながらその物と言葉を一致させていきます。
抽象的な概念の言葉は、ある程度言葉が使えるようになって、言葉によってその概念が理解ができるようになってからでないと身につきません。
したがって言葉を覚える順番は、まずは身近にあるよく目にする物の名前である名詞から始まります。
言葉よりも先に音から入る場合もあります。
「ゴーゴー」「ブーブー」「ワンワン」「ポッポ」などですね。
これは言葉というよりも擬音ですので、聞いた音を真似ていると考えていいと思います。
言葉も聞いた音を真似ますので、その音とそれと対応する物を指さして「じーじ」や「ばーば」と言います。
おじいさんを指さして「じーじ」と言うと周りが喜んで褒めてくれたするので、子供も気持ちよくなってどんどん使うようになります。
こうして言葉が身についていきます。
やがて動作についての言葉を身につけはじめます。
「かく」「なげる」「さわる」「はしる」などですね。
何かを書く・描くことを「かく」として身につけます。
ここでは「書く」「描く」「掻く」などの区別はありません。
「かく」で十分なのです。
言葉の習熟とともに漢字を習い始めます。
そうすると漢字の習熟に合わせて概念をどんどん高度化・複雑化させていきます。
本を読み始めるようになると書かれた文字から意味を読み取るようになります。
そして、漢字の習熟度が上がってくると同音異義語の区別ができるようになっていきます。
同じ音のこものが出てくると、以前に身につけた同音語が頭に浮かびます。
それと区別することによって、漢字の意味を覚えていくのです。
やがて漢字の成り立ちを学ぶようになると、音としては読めなくとも文字を見れはその意味が類推できるようになります。
複雑な文字ほど、持っている部首や含まれている漢字によって何に関連する文字か想像ができるようになってきます。
日本語は他の言語に比べて語彙数が多いと言われています。
一般的な会話の90%を理解しようとするときに必要な語彙数は、フランス語は2,000語、英語は3,000語、日本語は10,000語だといわれています。
これだけ少ない音で、これだけたくさんの言葉を表現するわけですから同音異義語はたくさんあるわけです。
母語を身につけていく間で、同音異義語を自然と身につけていくんですね。
すごいぞ、日本人・日本語!