2013年5月7日火曜日

問屋に集約された物流機能

物流・ロジスティクスの大きな要素として「運ぶ」ことと「保管する」ことがあります。

現実に物が動くことですからきわめて物理的な環境が大きな要素となります。

つまり、どこで作って、どこで保管して、どこで売るかによって「運ぶ」ことの効率が大きな影響を受けます。

また、メーカーの工場で作ったものを、最終的には小売店の店頭で販売するという一般的な物流を考えると、メーカーは生産に際しての理想的な量とタイミングがあります。

小売側も販売効率を最高にするための理想的な仕入れの量とタイミングがあります。

理想的な在庫の量は双方ともゼロです。

メーカーは在庫ゼロを目指して生産したものをすぐに出荷しようとします。

小売も在庫ゼロを目指して必要なときに必要な量だけ入れようとします。

どちらかの在庫をゼロにしようとしたら、もう一方は常に相手に合わせた余裕ある在庫を持たなければならなくなります。

「保管」することの効率を追求すると、トレードオフの関係となってしまいます。

相手のことを無視してしまえば高い買い物をしなければならなくなり、また相手に合わせて安い買い物をしたとしても運送や保管のコストがとんでもないことになってしまいます。

このように物流の効率においてはほとんどのことがメーカーと小売り側では相容れない内容となっています。


日本ではこの間の調整役を問屋が担ってきました。

メーカーは一度に同じものをたくさん作ったほうが単価が安くできます。

また、できた製品をすべていっぺんに引き取ってもらえればさらに保管のコストがかからないので安くできます。

小売り側も安く仕入れたいのですがメーカー側の提示するタイミング(リードタイム)と量(ロット)では対応できません。

問屋が間に立って、複数の小売やメーカーと調整を取ってそれぞれに合ったリードタイムとロットを設定して価格を調整してきました。

したがって、物流の調整機能を持たない問屋はどんどん淘汰されていきました。


変化が大きかったのは小売り側でした。

複数店舗から始まって、チェーン化そしてメガ小売りが台頭してくると、より細かくなった小売り側の要求にこたえるために問屋の生き残り策の決定打が物流対応になってきました。

問屋の中抜きで価格が下がるといわれた時代がありましたが、そうは問屋がおろさなかったわけですね。

この間に問屋が行ってきた物流対応は目を見張るものがあります。

数多くの物流企業がありますが、現在の日本で最高レベルの物流機能を持った企業は(食品)問屋だといえるでしょう。

メーカーと小売り側の両方を巻き込んでの効率化・健全化は業界の枠を超えています。

特殊物流やソーシャル・ロジスティクスに携わっている以外の物流企業、特に倉庫業や配送業はなんらかの形で問屋物流にかかわっているといえるでしょう。


私が問屋物流(中間流通)にかかわりだしたのが2000年ころです。

問屋が生き残りをかけて吸収合併と物流機能の充実に努めていたころであり、たくさんの貴重な経験をさせてもらいました。

特にシステムの進歩が目まぐるしかったころであり、業務のわからないITベンダーに頭に来ていたことを思い出します。


本当に効率のいい物流センターができ始めたのもこのころからです。

物流センター間のネットワークと機能別物流センターの構築は問屋物流の根幹となりました。

世界的に見ても人件費と土地のコストはスーパートップクラスの日本で物流コストが今の基準で収まっていることは、宅配便の発達と同時に頑張ってきた問屋のおかげだと思います。

でも、これからまだまだやるべきことがたくさんあるのも事実です。

普通にサラリーマンとして生きてきていたら、たぶん物流のことなんか知らなくても一生過ごせたんじゃないかと思います。

しかし、知ったことによってこの世界をライフワークにしようとまで思うようになりました。

問屋の物流機能は企業の優劣を決める決定打にもなるため肝心なところは社外秘のことが多く、触れる機会も少ないと思いますし公開されいる内容もごくわずかです。


これからますます増えてくるであろうネット販売や通信販売のキーポイントは物流です。

機会があったら一度物流の世界を覗いてください。

エスコートしますよ・・・。


お気軽にご連絡ください。