2015年6月4日木曜日

言語習得にもあるゴールデンエイジ

ゴールデンエイジという言葉を知っているでしょうか?

しばらく前からスポーツ界で頻繁に使われるようになっている言葉です。

9歳から12歳頃にかけて、子どもたちのスポーツにおける能力が一気に開花して急速な発展を見せる時期のことを表す言葉です。


自分では知らないうちのこの時期を過ごしてきており、振り返ってみても特に意識した記憶はありません。

それでも、この時期に好きなスポーツに打ち込み始め、身体的にも一気に運動能力が発達した感覚はあります。

それまでは、泳ぐことができなくて海やプールに行くことが嫌いだったのに、何を教わったわけでもないのに突然泳げるようのなったのがこの時期でもありました。


わたしは、サッカースポーツ少年団のコーチをしていましたので目の前で子どもたちの変化を見ることができました。

個人差はありますが、早い子どもですと小学校の3年生から一気にボール扱いや体の使い方が上手くなります。

遅い子どもでも5年生頃には短期間で一気に成長する時期が来ます。

私の経験では、体の小さな子供ほど早い時期に来るように思われます。


直接目の前でその変化が現れますので、驚かされることの多かった記憶があります。

昨日までは、私と一緒にボールのリフティングをしながら10回も続けもば良かった子どもが、とつぜん20回を超えたかと思うと数日もしないうちにほとんど落とすことなくずっと続けられるようになってしまうのです。

しかも、時間差はあるもののほとんど子どもに同じことが起こるのです。


この時に一番気を付けたことが、子ども達の関心を失わせないことです。

本当にサッカーが大好きで毎日ボールを蹴って遊んでいる子もいれば、仲間作りのためにお母さんに言われて参加している子もいます。

サッカーに関心のある子どもはテレビの試合もよく見ていますし、あこがれの選手もいてスのプレースタイルもよく知ってます。

あこがれの選手のプレーを真似しようとして練習の合間にも仲間と「ごっこ」をやっています。


同じプレーを知っていたり見ていたりする場合には、「やってみようぜ」ということで実際にやらせることもあります。

子どもは格好良かったことや点を取ったことを漠然とは覚えているのですが、選手の動きそのものはあまり覚えていないものです。

これがゴールデンエイジを迎えると一気に変わります。

選手の動きや体の使い方を覚えていて、お互いに「ああだった、こうだった」とそのプレーを再現し始めるのです。


このころの変化が面白くしかも不思議だったので、いろいろな分野のことを調べてみたのですが結果はよく分かりませんでした。

記憶の方法が幼児期とは変わってきており、また記憶の保持期間も伸びてきている時期です。

更に自分の体を使うことも意識できるようになってきているので、記憶したことを自分の体で再現しようとすることが可能になってくる時期だそうです。


さらには、そこまで習得した言葉を使って記憶するとともに、考えることができるようになってくる時期でもあるそうです。

記憶の保持期間はまだ伸びており、15歳くらいでは大人と変わらない2週間程度までのものとなるようです。

6歳のころで1週間程度と言われていますので、一気に伸びている時期になるのでしょう。


大切なのは自分で考えることができるようになっているということです。

記憶力もしっかりしてきていますので、言われることや教わることをそのままやってみることはかなりできるようになっています。

その通りのことだけをやらせてしまっては応用力が付きません。

ゴールデンエイジを迎えた子供たちには、自分で考えることをさせるようにします。


サッカーが大好きな子供は放っておいても自然に自分で工夫することをしますが、そうでない子に対しては考えて対応する場面を作ってあげることが大事になります。

その子がボールを奪われた場面で練習を止めて、もう一度やってみます。

そして、決してボールを奪われたことを叱りません、どうしたら奪われないで行けるかをその場で考えさせます。

そして実際にやらせます、奪う方もきちんと対応します。

何通りもやらせます。

見つからない場合は少しだけヒントを出して自分で方法を考えさせます。


ひとつでも奪われないで行けそうな方法が見つかれば、実際に何度かやらせて奪われない感覚を味わわせます。

奪われた経験があると同じような場面になりそうになるとすぐにボールを離そうとしてしまいますが、敢えて同じ場面を作るように言って練習を再開します。

ここからは注意して見ていなければいけません。


前に奪われた場面と同じようなものを作っているかどうか、作れたらそこで大きな声を掛けて「そこだぞ!」と見ていることを知らせます。

さっき考えた方法は奪う相手も見ていますので対応してきます、上手くいくかどうかは微妙なところです。

上手くいけば「いいぞ!」ですが、上手くいかなくても「いいぞ!」なのです。


ボールをすぐに離さずに奪われないように前に進むことをしようとすることに対して「いいぞ!」なのです。

結果として奪われてもいいのです。

さっきとは同じ奪われ方かもしれませんし違う奪われ方かもしれません。

奪われることを恐れて、奪われそうになる前にボールを離してパスをしようとすることをさせたくないのです。

奪われずにボールを前に持っていく喜びを味わってほしいのです。


奪われてもいいのです、すぐ奪い返しに行けばいいのです。

奪われた瞬間は足の速さは関係ないのです。

自分のゴールの前で奪われればすぐにシュートを打たれて点を取られてしまうことになりますが、それでもいいのです。

自分のゴールの目の前からであっても、自分で奪われないようにボールを前に進めることをしようとさせているのです。


しかもその都度替わる相手に対して自分で考えて奪われない方法を見つけて対応させようとするのです。

面白いことを考える子どももたくさんいます。

思わず反則をする子もいますが、反則すらよくわかっちませんのでその場ではやってはいけないこととして教えますがそれ以外は不フリーです。

一人も奪われずに、最後はキーパーまでも抜いてしまえばいいのです。


ゴールデンエイジに入ったと思った子どもには「一人で持っていけ!」が一番いい指導方法だったと思っています。

試合で奪われて点を取られても関係ありませんでした、何度奪われても何度でも一人で前へ進めることを中心にしました。

この時期の子どもは短い試合の中でもすぐに進化します。

ずっと奪われ続けていた子どもが試合の終わりごろには奪われなくなるのです。

奪われても取り返せるようになるのです。

しかも自分で考えていろいろなことをやってみることができるようになるのです。


同じ条件が言語習得においても言えるようです。

国語の読解力がこの時期の一番大切な力になることは先回のブログにも書いた通りです。

ゴールデンエイジの過ごし方と同時に、どのようにそこまでの準備をしたらいいのかも大切なことです。


初めて1,2年生をコーチとして担当していたときはどのようにしたら良いか分かりませんでしたが、ゴールデンエイジを担当した後では教えるのではなく一緒にこちらも真剣に遊ぶことなんだと分かりました。

ボールを使って遊ぶのは勿論ですが、ときには算数や国語でも遊んだりしました。

雨の日の練習は上級性よりも面白いメニューが沢山あたっと思います。


わたし自身は体育や遊び以外でのサッカーの経験はありませんでした。

野球は部活動などでもやっていましたし子どもたちの指導もしたことがありましたが、サッカーはど素人でした。

チームのコーチにもサッカー未経験者が何人もいたことがきっかけだったと思います。


知的活動においてもゴールデンエイジがあることに気がついてあらためて思い出したことでした。