台という漢字が持っている意味は、物事の基盤となることを表し、その上に何かを作り上げるイメージがあります。
土台や台地といった具体的なイメージにつながるものです。
したがって、漢字の意味から台風の文字のいわれを探ることは不可能のようです。
音の方から見てみることにしましょう。
日本のやまとことばとしては、のわけ(野分け)と呼ばれていたものが、現在の台風にあたるものだと思われます。
野分けと聞くと、なんとなく優しいイメージを持ってしまうのですが、秋の季語になっている二百十日ごろに吹く野原の草を根こそぎ吹き分けるような強い風のことを現わしています。
現在の台風のように雨については、特に意識された表現は見受けられないようです。
野分けから台風に転じたとしたら、相当に無理のある音のつながりや漢字の使い方になりますので、台風という漢字はそれだけでどこからか持ってきたものと思われます。
似た音には、台湾や中国の福建省あたりにある、激しい風のことを「大風(タイフーン)」と呼ぶものがあります。
これがヨーロッパにわたって音が利用されて、typhoonになったと思われます。
日本では気象用語として、風速32.7メートル以上の強風を「颶風(ぐふう)」と呼んでいました。
また、明治末期には中央気象台の記録として「颱風(たいふう)」という文字が使われていたものがあります。
これが、当用漢字が定められた1946年以降は、台の字が代用されて現在の台風になったと思われます。
勢力の大きな熱帯的低気圧として、北西太平洋・東アジア地区においては台風・タイフーンと呼ばれ、アメリカなどの北中米ではハリケーン、その他の地域ではサイクロンと呼ばれています。
各国によってその規模の表し方が異なっているために、呼ぶための定義はさまざまとなっていますが、同じ気象現象のことです。
颱風の語源としては、はっきりとしたものはありませんが、アジアでも東地域に限られている現象から、「大風(タイフーン)」が音としての語源になっていることは間違いないようです。
文字としての颱風は、ヨーロッパから再び戻ってきた音に颱風を当てたとするものもありますが、大風という文字を持っているのに、わざわざ颱風という字を当てる必要もないと思われます。
それよりも、台湾付近で起きる強い風のこととして颱風を当てたとする方が妥当な気がします。
また、アラビア語としてあるグルグル回るという意味のtufanがtyphoonとなり颱風となったとする説もあります。
インド経由の西アジアと中国との交易において、アラブ人たちの航海を妨げたグルグル回る強い風という言葉から来たという説は説得力があります。
感覚としては野分けというような感覚では済まないような強烈な台風も多くなってきています。
雨風を伴った台風による被害は、年々多くなっているようです。
新しい気象衛星、ひまわり8号も稼働し始めているようですし、より精度の高い気象情報が得られるようになると思われます。
自然の中に生かされていることを身近に感じている日本人にとっては、気象現象をコントロールするような無駄なことは考えません。
自然を感知することに勢力を使い、早めの対処によって被害を少なくすることを考えます。
決して自然に逆らうことなく、その変化とともに生きていかざるを得ない知恵の使い方は、世界に対して自慢できるし伝えていける内容です。
ここまで丁寧な気象情報が一般放送で行われている国はそれほどないでしょう。
変化の大きい自然とともに生きていく日本人の、本領発揮の場面です。
こういう知恵を発信していきたいですね。
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