漢字を文字として持っている言語は、日本語以外にも中国語系列の言語がありますが、どちらの場合にもその習得にかかる時間は膨大なものとなっています。
アルファベットを基本とする欧米の言語の基本的な習得が、小学校の低学年で完了するのに対して、義務教育が終了する15歳においても新聞で使われている漢字を習得しきれていないのが現実となっています。
日本も中国もどちらも義務教育は15歳までになっていますので、基本的な義務教育期間はほぼ同じです。
中国語には、文字は漢字しかありませんので、覚えるべき漢字の数は日本語よりもさらに多いものとなっています。
小学校の入学前に、話すことはほとんどできるようになっていますので、話している言葉に対応する漢字を身につけていくことになります。
中国の小学校では、6年間で約2,000字の漢字を覚えます。
日本の小学校の、ほぼ二倍になります。
それでも、中学生ではまともな作文ができないのが現状のようです。
それでは、日本ではどうでしょうか。
下の表を見てください。
日本の小学校で身につける漢字の数は、1,006字となっています。
中学校で身につける漢字の数がつかめなかったので、漢検の3級(中学校卒業レベルとされる)の必要漢字数を出してあります。
見ていただければわかるように、中学校を卒業しても、常用漢字がすべてカバーできていないのです。
新聞に使われている漢字があります。
常用漢字を意識して、2010年に常用漢字が改定されたときに、新聞常用漢字として定められたものがあります。
それによれば、常用漢字表の2,136字から、次の7字を除き、さらに5字を加えた2,134字を新聞常用漢字表として使用するものとしています。
削除7字:虞 且 遵 但 朕 附 又
追加5字:磯(いそ) 絆(きずな) 哨(ショウ) 疹(シン) 胚(ハイ)
また、新聞社においては、常用漢字とは別に各新聞社ごとに使用する漢字を定めているところもあります。
つまりは、義務教育で習得した漢字だけでは新聞が読めないことになります。
そのあとの高校でどの程度習得するのかも見てみましたが、これも漢検の出題範囲に頼ることになりました。
漢検2級が高校レベルとされていますが、そこでの対象の字数は1,945字となっているようです。
全く読めない漢字に出会ったとしても、おぼろげながら意味と音読みをイメージすることができるようになっているのは、漢字が表意文字だからです。
ほとんどの場合は、その漢字の構成(部首など)でなんとなく意味がつかめますし、音となる部分がどこかに含まれていることが多いからです。
そしての基本となる音と意味は、義務教育で身につけた漢字によって出来上がっていることが多いからなのです。
他の言語ではこの様なことはなかなかできません。
一部に似たようなことがあるのは、接頭辞や接尾辞などによって意味が転化しているモノを見ることができる程度ではないでしょうか。
すべての漢字は、文字そのものに意味があります。
複雑な漢字であったとしても、構成されている部首などの意味が分かることによって、本来持っている意味を推測することが可能になっています。
したがって、意味の組み合わせによって造語をすることも可能になります。
しかも、他人が見てもも話図納得してしまう意味を持たせた造語が可能になるのです。
単に、習得した漢字だけしか理解できないのであれば、高校を卒業したとしても新聞が読み取れないことになってしまいます。
しかし、文字としての漢字が持っているを意味や音をかなり高い確率で推測する術を身につけているのです。
他のとの大きな違いがここになります。
ですから、小学生でも新聞を読んで理解することができるのです。
知らない漢字に出会っても、推測することができるのです。
アルファベットを代表とする他の文字は、発音する音を表した文字となっているために、文字を見ても意味を推測することができません。
言語としては音声言語になります。
言葉にして伝えたほうが意味が分かりやすいものですので、その言葉自体の意味を分かっていないと理解しにくいことになります。
知らない言葉が出てきても、かなり高い確率で推測できる、しかもほとんどの人が同じように推測することができる文字は世界でも漢字だけだと思います。
すべての漢字を覚えていなくとも、理解することが可能な言語となっているのですね。
あらためて、日本語の懐の広さを見た気がします。
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