伝承語ということは、母親の持っている言語の限界が、伝えることのできる限界になると言うことです。
母親が持っていない言語や言語感覚は、「母語」として子どもに伝えることができないと言うことになります。
日本人の母親が子どもに伝えることができる「母語」は日本語になります。
日本語以外の言語を「母語」として子どもに伝えようとするには、母親が伝えたい言語を使いこなせてなければなりません。
それでもその言語は、母親が持っている範囲のものでしか子どもには伝わりません。
母親が持っている言語以外のものを、「母語」として子どもに伝える時は大変になります。
母親と接触することが「母語」を習得するうえでの障害になるからです。
日本語を母語として持っている母親が、子どもの母語を英語にする場合には、母屋が子どもと接することが英語としての母語を習得するためには邪魔なこととなってしまいます。
母語としての英語を子どもに身につけさせためには、母親の持っている母語としての日本語が邪魔になるのです。
そのような場合には、母語として英語を持っている人と子どもがいつでも触れ合っている環境を作らなければいけません。
日々の生活を共にして、生きていくことそのものがすべて英語で行われていく環境を作らなければなりません。
母親が持っている母語と異なる言語を、子どもに母語として身につけさせることはとんでもない苦痛を伴うだけでなく、親子のコミュニケーションにおいて将来的に問題を残すこととなります。
日本語を母語とする両親が、日本国内で子どもを育てる環境において、子どもの母語について考えることはまずないことだと思います。
母語の存在そのものすら気が付かずに、自然と日本語という母語を習得していく環境になっているはずです。
この時に、幼児教育という魔物と出会います。
子供の将来を考えているつもりで、実際には親の自己の満足のために、幼児教育という名のある種の教え込みをしようとしてしまいます。
幼児期は知的活動のために必要な体の各器官の機能を発達させるためにある時期です。
そのための活動は、本能的に生まれ持った活動で行われていきます。
機能発達のための唯一の媒体が幼児期言語である「母語」の習得です。
「母語」の習得に伴って、その母語を使いこなすのに最適なそれぞれの機能が発達していくのです。
記憶の保持期間を筆頭にして、物事を理解する能力は幼児期にはほとんどありません。
脳の発達も知的活動をするために機能発達の段階です。
この時期に何かを教え込むことは、意味のないことだけではなく本来の機能発達のための障害になることが多くあります。
赤ちゃん言葉があります。
子どもが最初に発信するものが赤ちゃん言葉です。
お母さんは自分の言葉で赤ちゃんに話しかけてください。
子どもの赤ちゃん言葉に合わせないでください。
赤ちゃんは実際に発声はできなくとも、理解できている言葉はたくさんあります。
その言葉のほとんどは、お母さんが話しかけている言葉です。
お母さんが赤ちゃん言葉で話しかけると、短い記憶の中でも繰り返しが起こってしまい保持されてしまいます。
お母さんは自分の言葉で話しかけてあげてください。
それで十分なコミュニケーションはできているのです。
幼児期の子どもが、こちらの問いかけに対して言葉である種の反応ができるようになるには、早くとも2歳以降になります。
それでも、こちらの言っていることを理解しているわけではありません。
単なるおうむ返しや持っている言葉の発信にすぎないのです。
意味のある応答ができるまでには、まだまだ時間が必要なのです。
この時期の子どもの反応に、なんとなく意味のある応答を見出して知能の発達だと思い込んで喜んでいることをよく見かけますが、まったく意味のないことです。
「母語」の取得がほぼ完了し、基本的な知的活動のための機能が定まってくるのが4歳頃だと言われています。
このころにはまだ、知的活動の基本である認知することと理解することと表現することが連携を取って行われてはいないのです。
とにかく「母語」を身につけることに終始している時期ですので、あらゆる活動が「母語」習得のために行われています。
3歳以降になりますと、母親以外の情報も取り込めるようになってきます。
それでも最終的な確認はやはり母親とも間で行われていることが多くなっており、一段と母親との会話が大切になっている時期と言えます。
幼児期の伝承語である「母語」の伝え方は、子度に向けての特別なことは一切しなくていいと言うことになります。
子どもの使える言葉に合わせて、母親が言い方を変える必要もありません。
子どもに合わせることが返って、子どもの母語の習得を遅らせることにもなりかねません。
母親が普段通りの自分の言葉で子どもに話しかけていることが一番の伝承方法なのです。
つい、赤ちゃん言葉を使ってしまうことがあると思いますが、たまにはいいのですがこれが続くと子どもの習得できる「母語」が遅くなったらり減ってしまったりすることになるようです。
大人になると外部情報の80%は視覚に頼っていますが、幼児期の子どもはその他の感覚で感じていることも多く、大人よりもはるかに他の感覚が機能しています。
全感覚で「母語」を習得していますので、大人が思ってる言葉以上のものを感覚として取り込んでいます。
幼児期の記憶はほとんどがリセットされてしまって、将来には言葉としては残っていきませんが、この時の「母語」によって作られた機能や感覚がその後の知的活動のための基礎力となります。
他の言語やテクニック的なものを教え込んでも、記憶には残りませんので無駄になってしまいます。
さらには、母語の習得においてはその活動を妨げることになってしまいますので、本来持っている知的活動のための機能開発を邪魔することになります。
5歳までの環境が、その子の知的活動のための基礎力を作ってしまうことは、昔から指摘されていたことです。
そのメカニズムについては今でも解明されてはいませんが、どうやら「母語」との関係がありそうだと言うことが指摘されています。
親の自己満足のために、子どもに余計なことをやらせないことが一番いいことのようですね。
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