日本語の持つ特徴として、他の言語との比較したものは何度か触れてきました。
(参照:気づかなかった日本語の特徴)
今回は日本語で思考することについて言語の点からどんなことが見えてくるのかやってみたいと思います。
思考は言語でなされていることがわかっています。
個人の中で一番使いやすい思考ツールは母語です。
訓練によっては母語以外の言語での思考も可能になるようですが、その広さや深さや論理性においては母語にかなうものではありません。
個人として持っている言語の限界が、思考の限界であることも様々な実験によってわかってきています。
では、
日本語の特徴として思考において出てくることはどんなことでしょうか。
他の言語と比べて大きな違いは、日本語の表現力の豊富さにあります。
その根源となっているものは、同じことを表現するのに実に多くの言葉(単語)をもっていることと、文法的な構文の縛りがきわめて緩やかであることがあります。
これが思考に表れる結果は、思考の柔軟性となります。
日本語で思考しているだけで、同じ対象に対して様々な見方ができてしまうのです。
もちろん、その見方については個人の持っている言語による限界がありますが、これをカバーする定番的な方法を私たちは常に使っています。
昔から行われていて、私たちにとっては当たり前のやり方なのですが、それを定義したものがブレインダンプとブレインストーミングです。
意識せずにやっていることですが、改めてみてみるとその有効性が日本語だととても高いことがわかります。
日本語の言葉の多さと表現の豊かさは、同じ日本語であっても個人の日本語においてはかなりのバリエーションがあることを示しています。
また、経験や活動分野によって持っている言葉や表現に独特の偏りや専門性が出てきます。
深く思考するときには、自分の習慣となっている得意な思考方法で行うことになります。
思考のための技術があったとしても、慣れ親しんだ思考パターンを変えてまで行うことはとても難しいことです。
日本語においては他の言語に比べると、個人として持っている言語や思考のパターンはより多彩であると言うことができます。
個人として持っている言葉や表現はたくさんあっても、それを使い切っているとは限りません。
実際の仕事や専門分野での活動で使っている言葉や表現は、その世界での標準語となってるものに限られていることがほとんどです。
時々は、持っている言葉や表現を棚卸しておかないと、忘れていまいますし、記憶から消えてしまうこともあります。
せっかく持っている思考の柔軟性が失われてしまうことになります。
そこで昔からの方法として使われてきたのが、書き出し法と共同作業によるカード貼り付け法です。
この書き出し法とカード貼り付け法を論理的に整理したのが、ブレインダンプとブレインストーミングです。
ブレインダンプは基本的には個人で行うものです。
テーマに基づいて、そこから考えられることや関連することを短い言葉でひたすら書き出すことです。
時間を決めて、一度書いたものは気にせずに繰り返しになっても構わないのでひたすら書き出すことです。
慣れないと、途中で書き出すことがなくなって手が止まってしまいますが、ここがポイントです。
そこから時間いっぱいになるまで無理やり絞り出し続けるのです。
5分程度であれば、止まらずに書き続けることも可能であるかもしれませんが、20分以上となるとほとんどの人が途中で手を止めて絞り出そうとします。
この絞り出すと言う活動がとても重要になります。
使い慣れた言葉や使い慣れた発想法から導き出されるものが枯れたところからが勝負になります。
そのためには、きっちりと管理された緊張を伴う空間で行うよりも、リラックスできる邪魔の入らない空間の方がふさわしいことになります。
テーマの設定の仕方にもよりますが、短い言葉や単語がずらーっと並ぶことになります。
経験から言うと、ブレインダンプをした後で役に立つキーワードは、手が止まったあとに絞り出したものの中から見つかることがほとんどです。
今までの思考パターンや選択肢の中では見つけられなかったことが発見できます。
自分一人でやっていますので自分の持っている言葉以外は出てきませんが、眠っていた言葉を引っ張り出すにはとても優れた方法です。
普通であれば、手が止まってしまっところで書き出すことを終了してしまいますが、そこから先に本当に役に立つものがあるんですね。
テーマに対して様々なアプローチをして観点を変えていかないと、20分以上のブレインダンプは苦痛以外の何物でもありません。
どんなテーマに対しても常に自分の使う時間を決めておいてやることが効果的です。
ゲーム感覚でいいと思いますよ。
33分33秒なんて決め方もいいかもしれませんね。
ブレインストーミング(以下ブレストと省略します)はお馴染の手法だと思います。
複数の人で言いながら書き出したり、書き出したものを張り付けたりしながら、周りの出したものにヒントをもらいどんどん発想を拡散させていく方法ですね。
テーマを決めた後に、いきなりブレストを始めるミーティングを時々経験しますが、ほとんどの場合は何の役にも立っていません。
持っている枠の中でやっているだけですので、メンバー間の共有にはなってもなかなか新しい観点は見つかりません。
しかも、人数が多ければ同じようなものがたくさん出てきますので、集約作業がやたらと大変になります。
結果として、ありきたりの集約となることがほとんどです。
ブレストの前提は、参加メンバーの一人ひとりがテーマについてのブレインダンプを終わっていることです。
それなくしてのブレストは意味がありません。
ブレストの前に、一人ずつがカードに記入する時間を採ることもよくありますが、5分程度では意味がないことはもうお分かりになると思います。
ブレストをやるときに一番大切なのは、誰とやるかです。
一番良い相手は、自分と同じような事業観や人生観を持った、専門分野の全く異なる人です。
メンバーのレベル(適切な表現ではありませんが)が違ってしまうと、経験と実績に裏打ちされた人の発言に流されますし、触発されるものも少なくなります。
自然に受け止め自分の中から引き出すという本来の活動ができなくなります。
ブレストをやって効果がある相手が見つかりますと、普段の何気ない会話や飲んでいる時の会話すらが自然とブレストになってきます。
書き出さなくとも、お互いのブレインダンプに基づいての触発の連鎖が生まれるのです。
日本語を持っていることが一番生かされる方法ではないかと思っています。
まずは、20分でブレインダンプをやってみませんか、その結果を見るといかに片寄った見方・発想をしているのかよくわかりますよ。