2014年2月2日日曜日

言語習得の最重要期は?

私たちの言語感覚は、どうやら小学校の入学前に50%以上できあがっているようです。

私たち人間のみならず、動物は「同種の大人(親)の発声に対する注意」が本能的に刷り込まれているようです。

更に人は「外国語よりも自分の周りの言葉に対する注意が強く、男性よりも女性、それも母親の声に対する注意が最も強い」ことになっているようです。

したがって、乳幼児は母親が持っている言語に対しての注意の強さに導かれて、半ば本能的・自発的に言葉を習得していきます。

乳幼児が自発的に好んで注意を向けて全身で聴き取ろうとする音声の種類は、「母親の声、周りの大人が話している母語の言葉、やや高めのやさしい話しかけ、ゆったりとしたスピードで抑揚のある声」であると言われています。


生まれてから6ヶ月くらいまでは、どんな環境にある赤ちゃんであってもすべて同じように音の区別ができるようです。

生後10ヶ月頃になると、母親と同じ母語において使われている音しか区別できなくなってくると言われています。

そしてこの音に合わせて音声知覚や脳の機能、発声および関連器官の発達がなされていくことになっているようです。

母親が母語として持っている言語以外の言語を子供の母語にしようとする場合には、母親が子供に話しかけることが母語習得の邪魔になりますので大変なことになります。




2歳頃までは、母親を中心とした母語に浸りながら、脳をはじめとした各機関が母語をに対応できるように発育をしていく期間です。

2歳頃になると、脳や様々な器官の発達に伴って、理解できる言葉や使える言葉が一気に増えて、言葉の噴火・爆発が起きます。

ここから4歳頃までは理解できる言葉やつかえる言葉が飛躍的に増え続けて、基本的な母語による会話ができるようになります。

この時点で基本的な母語の習得は完了してしまいます。

つまり、言語習得における一番大切な時期は2歳頃から4歳頃にかけてと言うことになります。


この時に習得した言語や言語感覚によって脳の機能が決まっていきます。

日本語を母語とした独特の日本人脳は、この時点で基本形が決まってしまうのです。


ここまでのことは、子どもに表れる言語上の現象などからほとんどわかっていたことです。

実は、母語がほぼ身についた4歳頃から学習言語を学び始める小学校入学前後までに大きな差が出ることがわかってきました。

そのことは結果としては、母語における言語感覚として身に付くものですが、その後のコミュニケーション能力に大きく影響することになります。


母語としての日本語が身に付いてからは、母語による様々な体験が言語活動に影響するようです。

より多くの環境で、より多くの異年齢者との母語による会話や聞き取りの体験が、コミュニケーション能力を向上させることのようです。

この時期の子どもの活動範囲はどんどん広がっていきます。

散歩、買い物、お出かけ、旅行などで、あらゆる場面であらゆる年齢層の会話を耳にする必要があるようです。






できれば直接会話をする体験ができたほうがいいようです。


幼児期に祖父母と同居していた子どもと、共働きで早めに保育園に行き始めて親以外との会話が少ない子では、小学校入学時点で明らかにコミュニケーションの能力に差が表れるようです。

言語としての言葉は幼児期健忘にによってほとんどリセットされ消えてしまうので差は出ません。
(参照:幼児期健忘について

経験に基づく言語を使用する感覚として身に付いてくるものが違ってくるようです。


小学校からは、全国的にほとんど画一化した学習言語の習得が行われますので、大きな差が出るようなことはありません。

2歳から小学校入学前までの言語環境が、言語能力の50%以上を作ってしまうことになるようです。

この時期に何かを教え込むことは、半ば本能的・自発的に行われている言語の習得に対しての活動を妨害することになります。

したがって、母親以外ができることは、言語習得がより効率よくできるような環境を作ってあげることです。

4歳頃までは、直接子どもに影響できるのがほとんど母親に限定されいますので、具体的な環境つくりは母親に子どもとの接触時間を増やしてあげることです。

家事や周辺作業をサポートすることによって、母親が子どもに接する時間を増やすことです。


父親が直接子供と触れる出番は、子どもが母親以外の人とも会話ができるようになる4歳以降になるでしょう。

4歳以降は積極的にいろいろな場面で子どもに会話体験をさせることが必要になります。

親と他の大人の会話や大人同士の会話を聞いているだけでも違います。

子どもにとって新鮮な会話が聞ける環境を体験させることです。


この段階での子供の記憶は数日しかありません。

覚えることはできないのです。

この時期に様々な母語に触れることが、より豊かな母語表現の感覚的な基礎になるようです。


言葉を覚えこませても、記憶には残りません。

幼児期の言葉は、小学校以降には学習言語に置き換えられていきます。

しかし、言語感覚は刷り込まれて蓄積されていくのです。

聞いたことのない言葉であっても、感覚的に何となく理解できることはこの言語感覚によることのようです。


昔のように、祖父母との同居が減ったり、地域社会での交流が減ってしまった現代の子供たちは、基本的なコミュニケーション能力が落ちています。

意識して幼児期の言語体験を増やしてあげる必要がありそうですね。