2013年11月3日日曜日

専門用語のマジック

先回は日本人がアウトプットが苦手なことについて触れてみました。
アウトプットの目的にもいろいろなものがあります。

こちらの意図を理解してもらい、相手に行動をしてもらうアウトプット。
ほとんどの目的はこれになりますが、そうではないものもあります。
公開しない個人的な日記などは、相手を想定していないものです。
憂さ晴らしのための大声を出すのも、相手を必要としていないものです。


相手に起こして欲しい行動も、肯定的な前向きなことだけとは限りません。
意図的に相手を迷わせる、煙に巻くなんて言い方をしたりしますね。
怒らせる、不快にさせる、不安にさせる、などいろいろあります。



相手に肯定的な前向きな行動をしてほしい、あるいは自分のための行動をしてほしいときに、人は一生懸命アウトプットをします。
その行動を起こしてもらえるように様々なアピールをします。

人が行動を起こすきっかけも様々なものがあります。
ボランティア、同情、共感、応援、不安解消、見栄、損得、などがあり、それが自分の価値観の中で行動を起こすレベルまで高まった時に初めて行動に移ります。
それらのことに訴えかけようと、いろいろなアウトプットでアピールします。


モノを販売することを例に考えてみましょう。

まず、販売するモノを理解してもらわなければいけません。
そして、そのモノがどんなコトで相手の役に立つのかをアピールします。
さらに、そのコトが今の相手に価値観において必要であることを理解してもらいます。
ここで初めて、販売できる環境が整うことになります。

 

この時に一番忘れてしまうことがあります。
売り手と買い手という、対立する立場に立ってしまうために、「売り込む」「買わされる」の関係が出来上がってしまうことです。

「売り込む」立場が強くなってくると、モノに焦点が行ってしまい、専門用語や業界用語が増えてきます。
自分たちは毎日にようにその言葉を使って分かっていたとしても、相手には全く分からない言葉になります。
普通の言葉に似ているとさらに誤解を生むことにもなります。


普段の活動でも、集中して夢中になっていると、知らない間に専用用語や一般的でない自分の言葉を使っていることがあります。
実はこの専門用語は、自分たちがわかっているつもりでも、実際にはわかっていない場合がとても多いのです。

もともとは誰かが使い始めた言葉です。
その人はその言葉で表されるものを、普通の言葉で正しく説明できると思われます。
使い始めた人以外にとっては借りてきた言葉です。
この言葉が独り歩きすると、既にみんなに知られているような錯覚に陥ります。


最近の飲料のコマーシャルで盛んに出てくる言葉に「特保」があります。

「特保って何?」と聞くと、ほとんどの人がバカにしたような顔になります。
「そんなことも知らないの?」という顔です。
そして帰ってくる答えは、「特定保健用食品のことでしょ。」です。

わたしが知りたいことは「特保」=「特定保健用食品」ではないのです。
「特保」がどういうもので、私にとってどんな価値のあるものなのかを知りたいのです。
私のわかる言葉でそれを説明してほしいのです。



私たちの感性の中に、専門家=すごい人、専門用語を使う人、というのがあります。
ですから、
専門用語を使う人をそれだけで専門家であると勘違いして信じてしまう傾向があります。

それだけでモノが売れた時代があることもあるようです。


また、分からないことが恥ずかしい、こんなことを聞くことが恥ずかしいという感性があることも確かです。
特に、
知らないことを聞いたときに「そんなことも知らないんですか。」という態度を取られると、聞いたこちらが悪いことをしたような感覚になることがあります。
気持ちの中では、その瞬間に「バカにしやがって、絶対に買わない!」と結論が出ています。

専門家でなくとも、専門用語を使うことによって専門家に近づいた気がする人がいることもあります。
こういう人たちが一番始末に悪いですね。
アルファベット3文字の略語や聞いたことのない漢字の組み合わせがボロボロ出てきます。
聞いている方はすぐ嫌になります。
きっと理解してほしくないんだと思います。


本当の専門家たちは専門用語を普段の言葉で分り易く言い換えてくれます。
多少の正確さには欠けたとしても、分り易さを優先します。
狭い世界の話しを聞いてくれることがうれしいのです。
専門性を理解してくれるのがうれしいのです。

アイデアや思考の段階では、自分言語になっていると思います。
アウトプットするときはなるべく相手に分かりやすい言葉に置き換えることが大切です。
そのアウトプットによってまた、自分の理解が確認できます。

分り易い言葉に置き換えられないということは、元の言葉をちゃんと理解していないということなんですね。

思わず使っている専門用や略語はたくさんあると思います。
そのほうが格好いいと感じている部分もあるのではないでしょうか。
アウトプットするときには、見直しておきたいですね。

理解してもらうのに格好よさはいりません。
相手に理解してもらえる言葉を選んでアウトプットすることを心がけたいです。
そのためにはアウトプットするときに相手を想定しておくことも大切です。


むかしの人はいいことを言いましたね。

難しいことを難しく伝えることは誰でもできる。
易しいことを難しく伝えるのは学のあるバカである。
難しいことを易しく伝えるのが人を導くものである。




コメントを投稿