2013年11月8日金曜日

BGMによる表現の変化

曲を作って歌っているものとしては、その影響力を知っておきたいと思ってやってみた実験があります。
どこまで汎用性があるのか、他の人が行う場合も当てはまるかについては、一切の検証をしていません。
  
それは、BGMと表現の関係についてです。
BGMとアウトプットとの関係と言ってもいいのかもしれません。



結論から先に言いましょう。

BGMはそれを聞きながらなされるアウトプット(表現)の語感に大きく影響を与える、と言えると思います。

私が実際にやってみたことは以下の内容です。
「やまとことば」を中心としたやさしい表現についてのセミナー資料を作るときに、BGMとしてつぎの2曲をかけてどんな違いが現れるか試してみました。

・ブームの「島唄」
・レッドツェッペリンの「ロック・アンド・ロール」

初めは作業をしながら、曲を切り替えることをしてみましたが、思った以上に影響を受けることがわかりました。
曲を意識して、できた表現を意識することにかなり疲れました。
そのために同じ項目・内容についての作成作業でそれぞれの曲でやってみました。


「島唄」の場合は、表現される内容として漢字の音読み熟語がきわめて少ない、ひらがなが多い、やや短めの文が出てきやすくなります。
最初は項目に入れていなかった、方言についてまで触れることができました。
BGMによって引き出された項目だと言えるともいます。
気持ちとしては比較的のんびりとゆったりと考えられた気がしました。


 
「ロック・アンド・ロール」の場合は、漢字の音読み熟語がやや多めに出てきました。
さらには、「島唄」の時には一切出てこなかったカタカナが顔を出しました。
文というよりは、単語に近いイメージで箇条書き的に表現されていきました。
気持ちとしては「タッタッタッタ」というテンポに乗せられた感じですね、テンポとずれてくると追われているような気がしました。


今回の制作作業の主旨としては「島唄」の方が合っていたようです。

ここまでのことは、経験的に実感を持っている方も多いのではないかと思います。
BGMがあることによって、比較的テンポよく書き上げられたことも何度かあります。

今回の内容についても、それなりの納得感と達成感をもって出来上がったものを振り返った時に感じたことがあります。

面白くないのです。
メリハリがないのです。
一本調子なのです。

本として書くのならこの方がいいのかもしれませんが、セミナーとしての内容では間違いなく飽きられると感じました。

初めにやった、途中で曲を変えてみた場合はやや極端に出ていましたが、展開の面白さについては、こちらの方に軍配が上がります。
メリハリも付きすぎるくらいです。
ただし、全体としてのバランスはひどいものです。

作っていく段階の何カ所かで言葉をひねり出すのに苦労したところがあります。
どうやら曲を変えたときには、小ブレイクとなって作業上も思考上も切り替えが行われているようです。

同じ曲をずっとかけていた方が、頻繁に曲を変えたときよりも疲労感が少ないようです。
一つのテンポでやり続けたほうが継続力はあるようです。
ただし、メリハリは付けにくく淡々と作業ができる感覚です。

曲を頻繁に変えると、比較的早く疲労感を感じるようです。
変わるたびに体や頭が反応しているのでしょう、その都度リセットが働くのではないでしょうか。


自分名好きな曲をBGMに流している方もたくさんいると思います。

その場合の効果はこんなことが言えそうです。
その曲から導かれる表現が自分の好きな表現になっていて、その表現に浸っていることが心地よい。
自分の得意な思考と結びついているので、悩んだ時や詰まった時にその曲に浸ると一番落ち着く思考に戻りやすい。
気分的にノリが悪い場合でも、その曲のテンポにつられて淡々とこなすことができる。

一方、デメリットしては次のようなことが言えそうです。
思考や表現がパターン化しやすくなるため、広がりやメリハリが必要な場合にはかえって妨げになる。
その曲に浸って作業することが、とても楽になってきて効率的に感じられてしまうために、パターン化してきていることに気づきにくい。

 

おすすめのBGMの使い方はこんな風になるのかもしれないですね。

気分が乗らない時に、自分の好きな曲をかけてテンポを付けてしまう。
ただし、多様性が求められる思考が必要な時は、早めにBGMを切る。

単純作業の場合は、その作業テンポにあった曲を流しておくと、疲労感を感じにくく継続できる。

多様性が求められたり、思考が片寄ったりした場合には、BGMを変えることによって別のパターンを導き出すことができることがある。

人の意見や理解の仕方を取り入れるときは、その人の好きな曲を聴いたりイメージすると分かりやすくなる。

歌のついている曲の場合は、そこに使われている言葉によって刺激を受け、発想のきっかけになりことがある。
反対に邪魔になる場合もあるので、歌詞がついている曲をBGMに使う場合は注意が必要。


どうやら、いいことだけではなさそうですが、その効果を実感しておくことも大切ですね。
自分でいろいろな環境でアウトプットをしてみると分かってくると思います。
アウトプットの種類によって、それぞれ出しやすい環境が見つかるのではないでしょうか。

温泉宿に籠って、外部との接触を断って、空想の世界に浸りきって小説を書き上げた作家はずいぶんいましたね。
現実の世界を断ち切ることによって、フィクションの世界に身を置くことを感覚として作り上げていたんでしょうね。

アウトプットの苦手な人にとっては、まずはアウトプットをしやすい環境を作り上げてしまうこともいいことではないでしょうか。
習慣化は意志も大切ですが、環境を整えてしまうほうが楽しみながらできそうです。