2013年10月3日木曜日

言語習得の段階とその環境(2)

先回は幼児期の母語習得の環境について見てみました。
今回はその次の段階としての学習言語の習得について触れてみます。


母語の基礎が5歳くらいまでに一応の完了を見ると、今度は学習するために必要な言語の習得が始まります。
実際には小学校に上がってから学習指導要領に基づくカリキュラムによって身につけていくことになります。


学習言語の習得をしながら、ベースにある母語の補強もされていくことになります。
10歳頃までの小学校中学年が終了するまでが、学習言語の習得期間と言われています。

この間の小学校のカリキュラムはよくできていると思います。
国語で学習言語の習得を進めながら、他の教科によって補助をしていくことになります。

この間の国語以外の教科は、その教科を学ぶことよりも、学習言語の習得のための教材と考えたほうが適切と思われます。
すべての教科の教科書の内容は、国語の学習状況を反映して作成されており、学習言語習得のための副教材ということができます。

読んで理解することを中心に組み立てられており、漢字の習得もこの時期に集中して行われます。
すべての教科を通じて、学習するために必要な言語を習得することが行われます。

国語以外の教科においても、専門的な知識の習得よりも、その分野独特の表現や表記方法を学ぶことが優先されます。

4年生くらいになるとそれぞれの教科において専門的な知識も登場してきますが、考えることよりも読み取ることと記憶することが重要視されていると思われます。



10歳頃までに基本的な学習言語の習得が完了します。
様々な表現に触れて理解することが中心となり、読み取りが重視されます。

読書が推奨されるのがこの頃からです。
学習言語の習得によって読んで内容を理解することができるようになってきます。

以降は本格的に教科ごとの独特の知識の取得になっていきます。
この段階頃から算数や理科の教科に理解の遅い子供が出始めます。
算数や理科の表現は専門的なものが増えて来ると同時に、今までの普通生活では使ってこなかったような表現が増えてきます。

算数の場合は、数字と記号で論理を展開していくことが増え、独特の表現も増えていきます。
理科の場合は、実験や観察に関した表現が増え、記号や文字を使った原因と結果を考える論理性が必要となってきます。
他の教科は書かれていることが理解できれば、そのまま暗記してしまえば何とかこなせますが、理科と算数はそのまま暗記しても考え方が理解できないと応用が利きません。

学習言語の習得に遅れた子供は、特に理科と算数にその影響が出てきます。
高学年になって理科や算数が苦手な子は、理科や算数を繰り返しやってもだめです。
国語をもう一度きちんとやることによって、ほとんどの場合は取り返すことができるようになります。
一番わかりやすい例は、問題文をきちんと読み取れるかどうかを見ることです。



この段階での学校における教材や教科書はかなり理想的な物になっていると思われます。
問題は、きちんと一人ひとりの理解を待って進めているかどうかです。
個人差もありますが、誕生日自体も同学年でも最長11カ月は違う場合が出てきますので、個別のケアが必要になります。

小学校の先生は教科担当ではなくクラス担当となっているのには、この辺のことも理由になっていると思われます。

特に低学年のうちは幅広い知識よりも、学習言語の習得に特化することが必要になります。
学習言語の習得ができて、初めて幅広い知識の習得が可能になるのです。


学習言語の習得は母語の形成にも影響を与え、母語をより強固なものとしていきます。
母語をベースとした学習言語の習得によって、基本的な言語の習得がほぼ完了します。
10歳頃を目途に、聞く能力、話す能力、思考する能力の基本が備わったことになります。


他の国の言語は文字の種類がほとんどの場合一種類しかないので、これほど時間はかかりません。
大体は6歳くらいで基本的な言語を身につけます。

それだけ日本語は大きくて、身につけるのが難しい言語ということができるでしょう。