2013年9月3日火曜日

語感を使い分ける

語感が、ひらがな、カタカナ、漢字の書き文字の使い方のバランスによって成り立っている以上、

話し言葉では語感が現れないと思われがちです。

しかし、書き言葉ほど明確ではありませんが、話し言葉でも語感があります。

話し言葉では特に漢字の使い方の音読み訓読みが語感に大きく影響します。

訓読みの漢字は話し言葉ではひらがなとして聞こえて、素直にストーレートに頭に入ってきます。

漢字の音読みは話し言葉では専門用語や決まりきった言葉として聞こえます、そして頭の中では

その聞こえた言葉を漢字に置き換える作業が発生します。

ほんの少しですが、間が必要になるんですね。



人が一番最初に感じる語感は、母語習得の中心となる母親の語感です。

一人ずつの母親がそれぞれ固有の語感を持っています。

この語感をもって子供に母語を伝承していきます。

人は感情によって語感が変わります。

本人が意識しなくとも、その時々の感情によって語感が微妙に異なります。

子供にとっては母親のざまざまな感情にもとずく語感のうち、穏やかに自分を包み込んでくれる時

の語感が一番好きなのです。

母親の微妙な変化を、子供は五感を使って感じ取っています。

母親が常に穏やかな気持ちで子どもに接することができる環境を維持するために、周りのサポート

が必要になります。


そうはいっても、語感が一番鮮明に表れるのは文字として書かれた文です。

現代日本語の基本的な文字表現の方法は漢字かな交じりの文です。

漢字とひらがなを中心とした文の中に、カタカナ、アルファベット、数字が必要に応じて散りばめら

れたものとなります。

ポイントは漢字とひらがなの使い分けになります。


同じ内容を表す時に使える文字は以下の3種類になります。

  1.音読み漢字(主に熟語)による表現

  2.訓読み漢字による表現

  3.ひらがなによる表現


それぞれの表現による一般的な語感はありますが、語感は固有のものですので、一般的な語感に

頼ると失敗することもあります。

一般的には、あえてひらがなを使うことは語感を優しくすることになりますが、相手によってはバカ

にしていると受け取られ反発をされることもありますので注意が必要です。

相手の持っている語感の特徴を事前に分かっているといいですね。


さらに、語感を決定する要素として話し言葉と同時に使用することが可能であるかどうかという点

があります。

  1.話し言葉によるサポートがある場合

  2.話し言葉によるサポートはないが、話し言葉のために作成する文書

  3.書き言葉としてのみ、読まれるために作成する文書


1、の場合は話し言葉と書き言葉のどちらがメインであるかによっても微妙に使い方が変わってき

ます。

話すことのサブとして文字を視覚に訴える場合と、文書を読むことのサブとして言葉を聴覚に訴え

る場合とが出てきます。

2、の場合は演劇のための台本などがこれに当たります。

話すための文書ですから、文字では書かれていますが基本は話し言葉です。

3、になると話し言葉によるサポートがないのが前提で、文字言葉だけで論理を展開していかなけ

ればなりません。


そうはいっても相手も固有の語感を持った人間ですので、決まりきった語感で対応出来るとは限り

ません。

また、相手の語感に完全に合わせることは事実上不可能です。

仮に、完全に合ってしまったとしたら、気持ちよく読み進みながら眠くなってしまうことでしょう。

適当な幅をもって、使い分けることも必要になるでしょう。

今回は語感の使い分けを場面から見てみました。


一番大事なのは「誰に」伝えるのかですね。

ブログのように読者が特定できないものでも、読み手を想定して書くことが大切ですね。

日記的に自分の語感のみで書いている人をよく見かけますが、それであれば公開する必要はない

ですよね。

読み手の語感までを想定して書けるようになると、ちょっとした表現の違いでの語感の変化に敏感

になれますね。

そうなると、あえて語感を変えてみたり、それによって強調してみたりできるようになります。

語感が操れるようになると、文を書くことが楽しくなりますね。