2013年6月21日金曜日

あらためて母語について考える

最近、少しこのブログを読んでいただいている人が増えたのか、「母語」ってなんですかと言われる

ことがあります。

このブログの生命線ですので、時々触れてみることにしました。

その時によって少しずつニュアンスが変わると面白いかなと思っています。


さて、問題の「母語」ですがそんなに古い言葉ではありません。

「母語」が語られるようになったのは2000年以降のことだと思います。

決まった概念にはなっていないようなのですが、第一言語を身につける前に生まれたときから愛情

を持って触れ続ける言葉ということができると思います。

2011年に公益財団法人の海外子女教育振興財団が海外で子供(特に幼児)を育てる場合の母語

教育の大切さをパンフレットにして配布しています。


そして、海外での通信教育として幼児用の図書を販売し、母親による音読を推奨しています。

幼児期に中途半端に外国語に触れたり教えたりした結果、母語としての日本語をきちんと身につ

けることができなくなり、帰国後学校の授業が分からず苦労している例が積み重なっているようで

す。

かなりの危機感を抱いていると思われ中には「日本語を失う」という表現まであります。



母語と母国語の違いはあまり明確に説明されていません。

簡単に言えば以下のようになると思います。

 母語=母(生まれた時から一番身近で愛を注いでくれた人)より受け継いだ言葉。

 母国語=国籍のある国の公用語

ちなみに、英語では母語も母国語も「mother tongue」となり(概念の)区別はないようです。

また、言語学的には母語に近い概念として継承語という表現もあります。


日本語だけではなく、日本に来ている外国人も同じ環境にあるということで、愛知県では2013年よ

り対象となる言語を定めて外国人のための子供の母語教育のサポートを始めます。


さて、海外ではかなり危機感を持たれていますが、日本の中でも状況はあまり変わらないんじゃな

いでしょうか?

私は、幼児期の英語教育に非常な危機感を持っています。

小学校は5年生から英語が必修になっています。

母語の習得において一番大切な時期は2歳から5歳頃と言われています。

いわゆる幼児期です。

母語にかかわらず人間が人間として形成される一番吸収力のある時期がこの時であることは、い

ろいろな方面の研究によっても間違いないと言えるようです。

英才教育としてこの時期に何かを集中して教え込めば間違いなく効果は出ます。

しかし、この時期は広くあらゆるものを吸収するべきで特殊な方向付けをしないことが大切だとい

われています。

この時期に主には母親から言語を受け継ぎます。

この母語によってその後の必要なことを学んでいくのです。

母語は情報伝達のための道具ではありません。

思考そのものになる言語です。

道具としての言語は第二言語としていつでも身につけることができますが、思考そのものである母

語をに身つけられるときはこの時しかありません。

そしてその後の初等教育を通して母語を使いこなせるように磨いていきます。

海外で日本語に触れる機会が少ない幼児は比較的早い段階で、親が母語を選択しなくてはいけ

ません。

現地の言葉を選択するのか、日本語を選択するのか。

その子の生涯を決定する大変な選択です。

一人の人間の中に二つの母語は存在しません。

バイリンガルは母語プラス第二言語です。

第二言語では思考ができません。

母語でなされた思考を第二言語に通訳するのです。

バイリンガルはその通訳の効率がよいということです。

海外で周りにあまり日本語の環境のないところで、母語として日本語を選択した場合の親御さんは

ものすごい苦労をして母語教育をすることになります。


幾多の消滅危機を乗り越えて、世界でも数少ない独自の言語としてを継承されきた日本語はとて

も大きな言語です。

第二言語を学ぶときにも、母語よりも大きな言語は身につかないといわれています。

日本人で英語を使いこなせる人は数えきれないほどいますが、アメリカ人で日本語を使いこなせる

人ははるかに少ないです。

母語が日本語の人はいつからでも英語を身につけることができます。

きちんと母語を身につけることがすべてに優先することのようです。


母語についてはこれからもいろいろな面から振れていきますのでお楽しみにしてください。