2013年5月13日月曜日

物流からロジスティクスそしてSCMへ

物流という言葉(概念)は比較的新しい言葉です。

その語源は英語の Pysical distribution にあるといわれています。

アメリカで生まれ第2次大戦後に経済が成長する過程で、急速に普及するようになりました。

経済成長を担う企業活動のあらたな領域を統括する概念として定着していきました。


やがて1980年代にアメリカでlogisticsが普及します。

全米物流管理協議会がロジスティクス管理協議会へ改名されたのが1987年です。

この流れは一定のタイムラグを持ってそのままに日本に入ってきます。

おりしもバブルの絶頂期1990年ころに様々な物流の問題が表面化してきました。

労働力不足の深刻化によるドライバー不足、賃金上昇、製品の多品種化、多頻度小口化の拡大

などによって物流コスト上昇に苦しめられました。

こうした状況は企業において改めて物流の重要性が認識され、logisticsが急速に普及していきま

した。

ロジスティクス本部のように部門にロジスティクスが付き始めたのがこのころです。

ロジスティクスの語源はフランス語のlogistiqueで、ナポレオンの時代に使われ始めた軍事用語だ

といわれています。

日本語としてはその訳語として兵站という言葉が使われました。

現在ではこれに加えて後方支援という言葉も充てられることがあります。

極限の状況である戦争において、最先端の兵士に必要な時に必要なだけの食糧や弾薬の物資を

迅速に効率よく届けることがロジスティクスという最先端の軍事科学です。

企業のビジネスにこれが取り入れられるのは自然な流れで、ビジネス・ロジスティクスが生まれ、や

がて単にロジスティクスと言われるようになりました。


日本がバブルの絶頂にあったころアメリカであらたな考え方が普及し始めます。

一企業の枠を超えて、取引企業間で新たな取り組みをし、グローバル化で一段と厳しくなった競争

に対応できるようにするための経営手法でした。

それがサプライチェーン・マネジメント(SCM)です。

これが日本に入った時に取り込み方を間違えました。

いま、日本の物流はおかしな方向に向かっています。


アメリカのSCMは普及するまでにCPFRという時代を経験しました。

CPFR(collaborative planning forecasting and replenishment )は日本語にすると「需要予測と在庫補

充を協業で計画すること」とでもなるでしょうか。

この時代にいろいろな協業(collaboration)が試されました。

特に小売りとメーカーとの間で小売りの需要予測を共有した、店頭在庫補充までのコントロールが

行われました。

このときに主導的役割を演じたのは小売り側です。

共同で製造原価や原料調達まで検討し、小売り側の販売予測に基づいて日々変化する最適の店

頭在庫をコントロールするというものでした。

このCPFRの時代を踏まえて流通に携わる複数企業が、需要予測に基づき各段階で最適在庫のコ

ントロールを効率的に行うSCMの時代に入っていきました。


一方日本においてはCPFRの経験をほとんどせずに直接SCMを輸入することが起こりました。

一つ間違うとSCMは強者のための理論武装となります。

そのポイントは小売り側が持つ需要予測(販売予測)です。

流通の最先端で必要な商品を必要な時期にいかに効率よく供給していくかが本来のSCMです。

日本の現状を表現すると次のように言うことができるでしょう。

日本におけるSCMは、流通における一番の影響力を持つ企業が、自社の効率を最大化するため

に構築したシステムによって流通全体をコントロールすること。

つまりは強者による一人勝ちのためのシステムになっているのです。

小売り側が持っている需要予測(販売予測)を共有することが最初の出発点であるにもかかわら

ず、供給側が勝手に需要予測をすることが起こっています。

SCMにおいてサプライチェーンを動かすトリガーとなるのは最先端の小売りの需要の変化です。

それをきっかけとしてサプライチェーンが連動して一番効率のよいロジスティクスを行うことが本来

のSCMですが、トリガーなしの供給側だけの都合の良いサプライチェーンが行われているのが現

状です。

小売り側がこの中に飲み込まれている状況が多いのです。


一人勝ちを狙う企業は規模も大きいですし、情報システムや物流センターへの投資もできます。

ここが流通全体を牛耳ってしまい、さらに一人勝ちの状況を作っていきます。

同じ流通に携わっている他の企業は、一人勝ちの企業のためのサポート企業としてのみ生き残る

ことが可能となって疲弊してくことになります。

SCMという言葉自体は供給側から見たら都合のいい言葉です。

部門名に使っている勘違い企業もたくさんあります。

日本型SCMは完全に強者の理論となってしまっています。

本来の姿に戻すべくささやかでも少しずづ変えていきたいと思います。